Y) そう言えばさ。
K) うん。
Y) なんでこの会社やろうと思ったの?
K) いや、あのねえ・・・今さらする話じゃないような。
Y) これまで小霜はフリーのCD、コピーライターとして
商売はうまくいってたわけだろ。何を考えて新しい会社にかけようって思ったの。
K) おれは昔から、クリエイティブというものにそんなに興味がなかったわけだ。
Y) それは聞いたことあるな。
K) 広告代理店に入った時は営業志望だったもん。
Y) それも聞いたな。
K) 第一志望配属先は「ライオン担当営業局」。志望理由は「河合奈保子に会いたいから」。
Y) まあ、そんなヤツを営業にするほど博報堂も馬鹿じゃなかったってことだな。
K) まあそうなんだけど、おれの場合はなりゆきでクリエイティブ職になったようなものだし、おもしろいコピーを書いて独りで悦に浸るよりも、クライアントとか、営業とか、周囲の仲間が喜んでくれるといいなと、自然にそういうモチベーションで仕事するようになっていった。
Y) それが新会社とどう結びつくの。
K) そういうモチベーションで仕事をしてると、ATLもBTLもなくて、案件によってはちゃんとPRをやろう、とか、DMをまず作ろう、とか、そんなふうに考えるようになるんだけど、広告代理店の縦割り制に巻き込まれるとすごく動きが窮屈になるんだよね。
Y) それで自由に動ける組織がほしかったと。
K) 簡単に言うと。それに、いま、みんな不安になってるじゃん。
Y) なってるなあ。後(うしろ)とかなあ。
K) まあ実名まで出さなくてもいいと思うんだけど、後輩たちとか業界のみんなを元気づけるためには、独りだと限界があるんだよね。場とか組織とかじゃないと、集まったり膨らませたりできないし。
Y) 理想とか理論とかを打ち出すのも独りじゃやりにくいよな。
K) あんただって不思議だよ。ふつうにアートディレクターとしてフリーになった方が儲かったかも知れないじゃん。
Y) そのへんはまあおまえと同じかな。10年ぐらい前に、いわゆるいい表現物作っても、それだけで動く時代じゃないって思ったんだよな。
K) それでワイデンに入ったんだよね。
Y) うん。ワイデンは、いわゆるATLとかBTLとかっていう概念なんてないから。チラシは外のプロダクションに投げちゃえ、みたいなことはしないんだよ。店頭だろうとなんだろうと、得意先のコミュニケーションはクリエイティブが全部考える。いろんなことを学んだよ。
K) それで、なんで外に出ようと思ったの。
Y) 中国で何が流行ってるかわからんのだよ。
K) は?
Y) ワイデントウキョウは日本だけじゃなくて、アジア全体を見る拠点になっていってるんだけど、中国の若者がどういう気持ちでスポーツに臨んでるかなんて、おれにはわからんなと。そういう意味でもそろそろ外に出る頃合いかなと思った。
K) 日本というちっちゃーい市場でドメスチックに生きていこうと考えたわけだ。
Y) そうそう。ちっちゃあーくな。ちっちゃあーく。わはは。
K) そういうところがツボなんだな。でも完全に時代の流れと逆を行ってる気がするけど。
Y) たしかに。
K) いいの?
Y) そこまで考えなかった。
K) ワイデンの人たちは困ってないかね。
Y) いや、ワイデントウキョウも変わらないといけない時期に来てるんだよ。それで、どうやったら変わるか、ということを考えて、そうだ、おれが出ればいちばん変わるな、とも思ったわけ。
K) つまんない方向に変わる気もするけど。
Y) そんなことないと思うよ。いい人材も入ってきてるし。
K) まあ、カツ君とか得体の知れないものを提案するヤツがいなくなって、ナイキなんかはホッとしてるかもね。
Y) してるかなあ。
K) してるんじゃない?
Y) おまえはわかってないなあ。カツ君、あれはいいキャンペーンだったなあー。
K) にゃんまげの頃から全然成長してないって思ったけど。
Y) いやおまえ、にゃんまげと、カツ君は・・・わははは。
K) よくわからんけどそのへんもツボなんだな。