いま、世界経済が抱えている問題は要するに、供給能力に対して需要が追いついていない、という点に絞られる。国内でも、自民党と民主党の争点はそこだ。ならば、需要を喚起するための産業、つまり広告業界は大繁盛となっていてしかるべきはずなのに、大手広告代理店の業績はがた落ちだ。この矛盾はなんだろう。僕は、広告業、あるいはマーケティングというものが、いつしか需要喚起業からただの「効率のいい待ち伏せ屋」に落ちてしまったからではないかと感じている。商品開発は、生活者の好みのものを作るのが手っ取り早いということで、メーカーを「生活者の下請け工場」にしてしまった。広告も効果測定のできるダイレクトレスポンスがいいということで、いわば御用聞き、ご機嫌伺い広告が主流となりつつある。そしてクロスメディアだ。これは最初からほしがっているターゲットに情報を届けるテクニックを研ぎ澄まそう、というものであって、この手法の問題点は、ほしくないターゲットにはてんで響かないところだ。僕らがこの時代にあえて「クリエイティブ」を標榜しているのは、人にほしい、やりたい、という気持ちを起こさせる技術こそがクリエイティブだからだ。クリエイティブなきクロスメディアは、魂の入ってない仏と同じで御利益がない。業界を見回すと、そのことに気づいている人間はまだあまりいないようだが、いま求められているのは需要を喚起するタイプの新しいクロスメディアだと思う。クロスメディア時代に芯を通すクリエイティブを自分たちは「Vital Creative」と呼ぶことにしている。